たまゆらのなかのとわ

絵  詩のようなもの 祈り 共時性 日記 時世 音楽

思い出

f:id:ae7chu:20170509185045j:plain


瞳が 目がきれいだねと そんなに知らない同級生から言われて

何とも言えない気持ちになった 言ったのは男子ではない

私の苦手な女子だ

○○ちゃんはどうしてそんなに色が白いの? 目の色が違う それは何色?

髪はどうしてそんなに真っ直ぐでサラサラなの? それに茶色いよ

それが褒め言葉と気づくのには しばらくの時間がかかった

私は女子が苦手だ 彼女たちの駆け引きや難解さが今も苦手だ

だけど外見を褒められて 内心では本当に嬉しかった 


担任は粗野な体育教師だった 目は俗に言う「狐目」で色が黒く 

背は中学生の私たちと同じくらいなのに いつも仰け反っていて 

どうしてだか大きくて こちらを見下ろしている大仏に見えた


当時の校則ではオンザ眉毛が当たり前で 少しでも眉毛にかかっていれば

体罰も日常だった 担任は手製の叩き棒を持っていた

だが 私への体罰体罰を超えていた 彼女は私を憎んでいる様だった

私には精神的にも肉体的にも痛めつけるやり方だった 

生徒に私を叩く様に命令するのだ 

先生のお気に入りの男子生徒には 私の髪を毟る様命じた 

その時は血がにじみ出た 男子生徒と先生は沢山抜けたと笑った


私は叩かれることには慣れていたが このやり方は流石に悲しかった


ある日 母の暴力は私の髪に向けられた 裁ちバサミを手にした母は 罵声を浴びせながら

私の髪を切った 

竹刀やガラスの灰皿や靴のかかとやベルトで叩かれるよりも辛かった

自分の中に芽生えた「自分が自分であることの意味」が床に散らばった

思春期の少女の髪を そして我が子の髪を切り刻む時の気持ちって どんなだろう


泣きながら登校した私を見て 外見を褒めてくれていた女子たちは笑った

担任はニヤニヤ笑い「きょうはいつもより可愛いな」と言った

それが皮肉だと 十分に伝わった


どうしたのと声をかけてくれたのは いつもふざけ合っていた男子数人だった

「お母さんに切られた」と言うと 「かわいそうに」と言ってくれた

そのうちの一人は 帰りたくない私に付き合ってくれた

真っ暗な裏山で死にたがる私と 一緒に死んでくれると言ってくれた 

私はそこで我にかえった 一人で死ぬのも怖いけど 

優しいこの子までが死ぬのは違うと思ったからだ

我にかえって手首が痛み出した 出血は大した事ないのに

ズキンズキンと物凄く痛かった 



今も時々その子が夢に出てくる どこでどうしているのかも知らないのに

もう顔も忘れたのに 夢の中ではその子だとわかる


ギュッと手を握ってくれた感触で目が覚めると 横で夫がイビキをかいている

私はそっと夫の手を握った