たまゆらのなかのとわ

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咲かない桜

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私の庭には 咲かないと言われる桜がある


始めは皆 ああ桜を植えたのね


なんてすばらしい なんて楽しみと


それはそれは ちやほやした


春が来ても一向に花を付けない桜を見て


始めは皆 ああどうしたのかしら 可哀想と


その次の春も その次の春も


庭の桜は花をつけず 


そのうちに 誰もその桜を見に来る人は


居なくなり 横目で見て 見ぬふりをした


それどころか これは桜ではないと 


奇異の目で見る始末 ついには


まるで 忘れてしまったかの様に 誰も来なくなった


それでも 本当は よくよく見ると


よくよく見ると 春には 一つだけ


そして その次の春には二つだけ


花をつけているのです


よくよく見ないと その愛らしい花を


見つけることはできないのです


よくよく見るだけの ただそれだけの労なのです


それでも皆は 春には よその満開の桜に夢中です


あれ 美しや あれ 可愛いや


これぞ桜 春の桜よ美しや


咲かぬ桜に用はなし


咲かぬ桜は桜にあらず


私の庭の 愛しい桜の お話し


どの桜よりも 愛しい 愛しい


私の桜のお話し